SIEの作品が次々とPC向けに配信…いったいなぜなのか?

SIEの作品が次々とPC向けに配信…いったいなぜなのか?

Detroit:Become HumanのPC向け配信、Epic Game Storeへの配信が発表されました。SIE作品では風ノ旅ビトに続いてのPC配信となり、少し驚きました。Sony Interactive Entertainment (SIE)は言わずと知れたプラットフォーマーです。プレイステーションというハードを持っており、CS機では今世代トップを走り続けています。そのプレイステーションの好調の要因の一つである独占自社タイトルをPCに配信していく流れは一体なぜなのか?考えてみたいと思います。

最初に発表されたのは風ノ旅ビト

まずはじめにEpic Game Store(以下EGS)に配信が決まったSIE作品は風ノ旅ビトでした。EGSでのパブリッシャーはAnnapurna Interactive。そして今回PC配信が決まったDetroitです。おそらくクアンティック・ドリームがパブリッシュを担当します。一見両方ともSIE販売のファースト作品ですが、この作品たちには共通点があります。ゲームの開発スタジオなど興味のない人は知らないかもしれませんが、この2タイトルの開発スタジオ、実はSIEの自社開発スタジオ(所謂ファースト)ではないのです。風ノ旅ビトは開発がthatgamecompanyという会社です。Detroitを始め、ヘビーレイン、BEYONDを手がけたのはクアンティック・ドリームです。2つのタイトルはSIEと外部スタジオとのコラボで制作されたということです。

自社(ファースト)スタジオかどうか

SIEの自社(ファースト)スタジオSIEワールドワイドスタジオと呼ばれています。公式には以下のように載っています。

ヒット作を数多く抱える制作スタジオが連携したWorld Wide Studios(WWS)は、Sony Interactive Entertainment が誇るPlayStation®ゲーム開発拠点の世界的なネットワーク。ゲームへの情熱にあふれ、素晴らしくクリエイティブな才能が多数集まるタレントの宝庫といえる組織です。(公式から引用)

これらのスタジオは例えばアンチャーテッドを開発したノーティドッグや、Horizon Zero Dawnのゲリラゲームズ、ゴッド・オブ・ウォーのサンタモニカスタジオなどはSIEのWWS、ファーストスタジオなわけです。これから発売されるゲームでいう内デイズゴーンのベンドスタジオ、ゴーストオブツシマのサッカーパンチなどもそうです。あまり知られていませんが、以下の動画もWWSの一つ、PIXELOpusの最新作です。

ではWWS、ファーストスタジオではない開発のタイトル(共同開発もあるが)はどんなものかと言うと、最近だとスパイダーマンです開発したのはインソムニアックゲームズ。ブラッドボーンなら開発はフロム・ソフトウェア。UNTIL DAWNなら開発スーパーマッシブゲームズ。実際、他プラットフォームにもソフトを提供しています。そして今回のDetroitのクアンティック・ドリーム、風ノ旅ビトのthatgamecompanyなわけです

ここからは完全に個人の予想になりますが、アンチャーテッド、Horizon、ゴッド・オブ・ウォーなどは自社スタジオの開発タイトルなので今の流れからいけば、このままPSの独占ファーストタイトルとして展開されていくと思われます。逆にスパイダーマンやUNTIL DAWNなどはファーストスタジオメインの制作ではないので、あくまでこの考えが正しいならですが、今後もPC版として出す可能性があるのではないか…?と勘ぐってしまいます。

ただSIEEuropaが以下のような動画をこのタイミング(2019年3月時点)で上げているので、スパイダーマンは独占のようです。(以下の動画でスパイダーマンだけWWSではない)

EGS側の戦略?

PC版が出る理由はEGS側からへSIE(もしくは直接クアンティック・ドリームへ)のアプローチで実現したというようなことがひとつとして考えられます。Epicの現在の親元は中国企業、テンセントという超巨大企業ですし、Epicの最近の動き(Steamでも販売されるはずだったタイトルをEGSでの時限独占タイトルに無理やり持っていくなど)をみれば十分考えられることです。SIEの戦略というよりはEpic側のSteam対策のひとつというような感じがします。SIE的には販売の許可をするという立場でしかなく、戦略的な意味合いは大きくないように個人的には感じます。あえて考えれば、将来的にPCにおいてもPSNowをさらに展開するため、PCユーザーへのアピールということも考えられるでしょうし、PS以外でのファン獲得という意図もあるかもしれません。

PSならではの操作性がどうなるのかも気になる。

開発スタジオが独立する流れ?

またクアンティック・ドリームは最近NetEase(ネットイース)との提携も報じられ、こちらも何か関係しているのかもしれません。ネットイースといえば荒野行動IdentityVなどモバイルゲームでも有名な中国企業です。この提携で多くの資金を獲得し、ソニーから販売の権利をまるごと買い取ったのかとも思いましたが、EGSではSIEの商標表記があるのでそうではないようです。ただ、クアンティック・ドリームはこれからはマルチプラットフォームで展開していくことを匂わせているのでネットイースの力を借り、自らパブリッシングしていくのかもしれません。その最初の一歩がEGSでの展開ということなのでしょうか。実際EGSではDetroitなどの販売はクアンティック・ドリーム自身が担当するようです。(ちなみにEGSでの風ノ旅ビトは開発のthatgamecompanyではなく、Annapurna Interactiveという会社がパブリッシュを行っています。)

というわけでSIEで独占だった作品がPC作品で展開する理由は以上のようなことが考えられますが、この中でも開発スタジオが独立してパブリッシュをやっていきたいという説が強いかと思います。thatgamecompanyに関してはEGSではパブリッシュしていませんが、PS以外にも販路を広げていきたい=SIEに頼らずとも、スタジオを大きくしていきたいと将来を考えてのEGS進出ではないかと考えました。PCで展開していく上で条件等、EGSと思惑が一致したのかもしれないですね。というのも前述通り、クアンティック・ドリームもthatgamecompanyもファーストスタジオではありません。来るクラウドゲーミングストリーミングゲームの時代に備え、スタジオとして独立してやっていくための布石ということかもしれません。

何れにせよ、ゲームファンにとっては選択肢が増えるのはいいことだと思います。ただ、個人的にはSIEWWSにしかできない独占ゲームにも期待したいです。よくソフトありきと言われますが、私はハードというかゲーム機の存在にも愛着があります。クラウドゲーミングが普及していく流れになっても無くなってほしくはないですからね。

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